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間宮林蔵 [吉村昭]

間宮林蔵

間宮林蔵

  • 作者: 吉村 昭
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1987/01
  • メディア: 文庫


 江戸時代後期、樺太探検をした人物。中国大陸と樺太の間に海峡があることを発見し、その海峡に間宮海峡と自分の名前まで残している。世界的にも有名な探険家だ。
 吉村昭は、この時代を舞台にした小説を数多く残している。記録文学的手法で、取材および資料に基づき、客観的に微細に克明に描くことにより、間宮の実像に迫っていく。
 間宮は、貧しい農家の生まれであるが、役人村上島之允の下僕になったことから、探検家への道が開ける。
 前半は、探検家としての間宮を描く。彼が、樺太への探検をするのは、20台だ。幕府の命令によるものだが、自ら志願したこともある。その探検はまさしく過酷なもので、何度も失敗しては、再チャレンジしている。飢えと寒さに苦しめられて、よく生きて帰れたと感心する。目標を持ったら、途中で困難に遭遇しても、最後まで諦めず、やり抜くという強い意志を持った人物だ。現在の我々にも参考になる。
 吉村昭は、自然の厳しさを淡々と描いており、よりリアリティを増している。冬の真っ白ら樺太の景色が目に浮かぶようで、また、寒さが、身にしみるように感じられる。
 後半は、役人としての人生だ。いろいろな幕末の事件と遭遇する。中でも、シーボルト事件とは、深い関わりを持つ。彼が、シーボルトからの贈り物を受け取らず、上司にそのまま渡したことが、シーボルトを取巻く人々に疑惑を抱かせたきっかけをつくったとも言える。間宮は、非常に用心深い人物でもあり、正義感が強く、自分がこう思ったら、後には引かないというタイプだ。
 また、幕府の隠密として、全国を旅し、浜田藩の密輸も摘発することになる。
 ただ、最後は寂しい最期だ。一度の妻帯もすることなく、子供もなく、一人寂しく、死んでいく。
 後日談として、シーボルトのその後が書いてあるが、皮肉なことに、間宮を世界的探検家として有名ならしめたのは、シーボルトの著書「ニッポン」ということになっている。シーボルトがいなければ、樺太が半島でなく、島だと発見したのは、間宮ではなく、別のロシア人ということになっていたはずだ。


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コメント 12

ピロリン

間宮林蔵は日本史の授業で聞いたくらいです。
連想するのはロシア、樺太、探検家です。
日本史の授業では一人の人の人生を深く追求することはできないので、
見ているのは人物の人生のほんの一部分だけですもんね。
日本史に名を連ねる人たちの偉業は、過程にこそ存在すると思います。
だからこういう本は勉強になるんですよね。
by ピロリン (2006-02-08 20:00) 

マイケル

この本自体は昔書かれた本ですが、私も文庫本になって初めて知りました。是非読んでみて下さい。
by マイケル (2006-02-08 20:37) 

knacke

歴史は苦手で、興味を持つ前に、
歴史の授業とは縁がなくなりました。
でも、このような本を読めば、
歴史に興味を持つキッカケになったかもしれません。
by knacke (2006-02-09 00:31) 

マイケル

歴史は面白いです。今からでも、いろんな本を読んで見て下さい。
by マイケル (2006-02-09 06:53) 

歴史も人物に焦点を当てて書かれたものは面白く読めますね。
でも元々あまり好きではないです。息子は歴史お宅でしたが・・・
塩野七生さんのローマ人の物語はやはり人物に惹かれて読みました。
by (2006-02-09 20:15) 

マイケル

歴史は人間が作るものなので、歴史を勉強することは、人間を知ることになると思います。
by マイケル (2006-02-09 20:29) 

ao

マイケルさんの「歴史は人間が作るものなので、歴史を勉強することは、人間を知ることになると思います。」というコメントにnice!です。
私は時代劇(チャンバラ)は好きなのですが、歴史を勉強しようという気持ちに欠けています。う~ん、マイケルさんの上記のコメントを見てると、勉強しなきゃ!っていう気持ちになってきました。この熱が冷めないうちに行動に移さなきゃだわ!
by ao (2006-02-10 02:16) 

マイケル

aoさん、コメントありがとうございます。勉強するという大げさなものではなく、興味があることについて、本を読むとか、史跡を見てみるという程度です。でも、ブログに書こうと思うと、多少調べたりもします。でも、インターネットは便利ですね。昔であれば、図書館に行って、本を探さなければならないのが、検索ボタンを押すだけで済むのですから。
by マイケル (2006-02-10 06:37) 

masugi

ご訪問、ありがとうございました。
歴史がテーマとは、奥が深いですね。
また色々勉強させてください(^-^)。
by masugi (2006-02-11 00:09) 

マイケル

コメントありがとうございます。こちらからも、たびたび訪問させていただきます。
by マイケル (2006-02-11 07:37) 

ビンゴ

コメントありがとうございます。関東に住んでいるとお城も少ないですが大阪にいた時は、よくお城に行きましたよ。大阪城などは、小学校の遠足で行くのですが、天守閣はこんなに暗くて不気味ときしきしという木製の階段を上がって行ったのですが、最近行くと博物館のようになり大理石の床に3Dの説明映画と、わかりやすいが、当時を感じるという点ではなんてことをしてるんじゃ!と思いましたよ。
by ビンゴ (2006-02-12 00:48) 

マイケル

昔のままのお城がいいですね。姫路城なんか最高だと思います。
by マイケル (2006-02-12 21:21) 

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