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文楽「通し狂言 伊賀越道中双六」観劇 [文楽]

 久振りに、文楽鑑賞に大阪・日本橋にある国立文楽劇場に足を運ぶ。文楽というと堅苦しいイメージがあるが、一度通いだすとたまらなく面白く、結構はまっている人も多い。
 今回の演目は、「伊賀越道中双六」という仇討ちものである。「鍵屋の辻の決闘」とも呼ばれる実際にあった事件を題材にしている。
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 通し狂言というのは、一日がかりで一つの作品を上演するものである。通常、文楽を見に行くと、一つの作品のすべてでなく、いくつかピックアップした「段」を見る。通し狂言という公演の仕方の方が珍しいのだ。朝10時半に始まり、8時50分に終わる。これをずっと見るのは、流石にしんどい。2時間物の映画をじっと見るだけでも眠たくなるのだ。幸いに一部と二部の分かれているので、一部と二部を別々の日に見に行く。ひょっとして、一日で最初から最後まで見る豪傑もいるのかも知れない。


 第一部は初日の11月2日(土)に、第二部は11月9日(土)に行く。難波の駅から歩いて10分程。コンビニで弁当を買う。途中、昼食のための休憩があるのも、昔ながらでいい。文楽劇場に併設のレストランで注文すると、それこそ江戸時代の風情のある弁当を用意してくれるのかもしれないが、少々値段が張る。せめて、デパ地下で少し贅沢をしたいのだが、デパートのオープンが10時なので、時間的にきつい。
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 どんな人が文楽を見に来ているかというとやはり年配の人が多い。きちんと着物を来た女性の方もいる。意外に若い人もちらほら見られる。外国人のグループもひと組、ふた組。
 私も4~5回目だが、服装は特に改まったものでなく、普段着のままだ。席は二等席だ。一等席が5800円に対し、二等席は2300円。通しで見ると、それぞれ倍になる。出来るだけ数多く見たいと思っているものにとっては少しでも安いほうがいい。今までは家内と二人で来ていたが、家内は映画でも何でも暗いところで座ると寝てしまうのだ。あまり無理強いをしてもいけないので、今回は一人で行くことにした。周りにも結構一人で来ている人もいる。弁当を食べるときは二人以上の方が楽しいが、観劇している間は一人がいい。
 二等席は、後ろ2列で、それ以外はすべて一等席だ。前の方が人形の表情までよく見えていいのだが、後ろは後ろで全体が見渡せていい。また、舞台の上の方に太夫の語りが字幕として表示されるのだが、前の方だと上を見上げなくてはならない。
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 演目が始まると、10分もすると、斜め左前の席の着物女性が首を横に傾けて眠り始めた。すぐ前の若い女性の二人組の一人も眠り始めた。さらに10分すると、外国人の団体が一斉に席を立った。おいおい、少し早すぎるだろう。一時席を外しただけかとも思ったが、二度と帰って来なかった。
 文楽の仕組みを素人なりに簡単に話すと、出演者は人形遣いと太夫と三味線弾きからなる。主だった人形は三人で使う。顔を出している人が一番偉い人で、頭と右手を動かす。それ以外に左手を動かす人と、足を動かす人がいる。太夫と三味線はペアで、場面場面で入れ替わっていく。太夫は、手元にある「床本」という台本を見ながら、独特のリズムとイントネーションの言い回しで、筋と人形のセリフを語っていく。この抑揚は太夫によって違い、本当にほれぼれとする。何度も聞くと、ついつい真似したくなる。
 演目の内容については特に触れないが、文楽のストーリーの特色として、登場人物が複雑に入り組んでいる。全く関係のないと思っていた人物がそれぞれ親子だったり、師弟だったりする。また、文楽のお話は基本的には悲劇で、登場人物は義理と人情に挟まれて、ハムレットのように悩む場面が多い。ひと昔前の任侠映画のように、義理が重たい漢(おとこ)の世界で、最後には義理を優先し、そのために身内を殺したり、自らの命を絶ったりする、暗いお話である。
 文楽にも、スターがおり、太夫の竹本住太夫や、桐竹勘十郎が登場すると、盛大な拍手が起こる。桐竹勘十郎の操る人形の動きは細やかであたかも生きているようだ。

この演目を見ている中で、「袖すり合うも他生の縁」という言葉が出てくる。私は「他生の縁」でなく、「多少の縁」と思い込んでいたので、改めて意味を調べてみた。
 道で知らない人と、袖が触れ合うような小さな出来事でも、前世の因縁によるものだから大切にしろという意味だ。この句は、仏教的な考え方がベースにあるようで、「袖振り合うも多生の縁」とも言う。他生(多生)=仏教的に、現在、生きている状態以外の生命のこと。前世(生まれる前)と来世(死後の次の世)。勉強になるなあ。

 第一部の時はそうでもなかったが、第二部の時には、お尻がいたくて、何度も姿勢を変えて、我慢した。


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コメント 1

Silvermac

大阪に7年住んでいましたが、文楽劇場に一度行こうと思いながら、行かず終いでした。
by Silvermac (2013-11-10 18:29) 

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